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学園奉仕活動ー序ー VS Two

男と男と男そうそれはDonBay

“この鬼我島は俺が守る”


雲孤茂呂平(うんこもろへい)。

彼の口癖はいつもそれだった。



彼は高度経済成長期、突如、降って湧いたかのように現れ、手始めにと鬼我島のあらゆる土地を買占めた。


“鬼我島を守る”この言葉を本心と取るならば、当時の市が案として掲げた『鬼我島町おこし計画』から歴史的価値のある土地を守るため、裏取引をしてまで買占めという行動に出たと思うのが妥当であり、島民もそうだと信じていた。




だが、現実は違った。




なんと、茂呂平は案が固まり始めたと分かるや否や、歴史的価値の有無を問わず、買い占めた土地の全てを大型のリゾート施設やアミューズメント施設建設へと乗り出したのだ。




当然、当時の鬼我島住人らは裏切られた気持ちを胸に猛反対。
鬼我島の各所で抗議活動が行われ、過激化。一時、アジアで最も危険な島として名が挙がるほどにまでなっていた。




しかし、当の茂呂平はというと、そんなことになってるのを知りながら涼しい顔でメディアに登場しては、島民を挑発するような過激な発言を行い、世間を騒がせるだけで建設を中止することは無かった。




そして、しばらくしたある日、茂呂平は……。








「……って、こら、百ちゃん。鼻くそほじってどこかへ行くな」

「え? いや、行ってないよ。ちゃんと座ってるだろ」

「いいや! 嘘だね!  意識は完全にどこかへ行ってた!」

「い、行ってないって。ちゃんと聞いてた」

まあ、爺の言う通りなんだけどな……。
どうも真面目くさった話―――というか話し方で語られる話って頭に入ってこないし、イメージも湧かないから空っぽになってしまう。

「ったく、酷いやっちゃでぇ! 人がせっかく、10分DONBAYに挑戦してもいいかと思って、話してやってんのにさ!  お前っていう百太郎はほんまにぃ!!」

「ご、ごめんごめん。悪かったって。俺も10分付き合うから」

「ったりめえだろ! 人が話てんのにてめえだけズルズル音させやがったら、世界一臭い缶詰、部屋密封して開封するからな!」

「もう、わかったっ。それだけはマジでやめろ。俺以前に爺がまず死ぬぞ」

DONBAYは確かに、人間が考えた中では上位に君臨するほど美味いものだとは思うが、時間を守らされただけでここまで爺が怒る理由が毎度ながらわからない。長年の謎だ、マジで。

「ったく、ほんまにっ。次、話聞いて無かったらこの場でシャワー浴びてやるからな! 山田さんみたいに!」

「お前っ、それはほんとやめろよっ?  ここの大家、ムキムキでむっちゃでかいババアなんだからっ」

「だからやんだよっ!  豊臣のババアに殴られろっ!  恐らく死ね!」

「あほかっ、死んでたまるか!  っていうか恐らく死ねって初めて聞いたぞ!」

なんて言い合う声が大きかったのだろう……。

“おいこらぁ、 ピーチ共ぉっ!  じゃかぁしいんじゃ!!  静かにせぇ!!”

地鳴りの様な声と共に、地震かと思うような床ドンをされ、俺と爺は瞬時に隅で身を寄せ合い縮こまることとなった。
















“これでよかったんかのぉ……”

鬼我島総合病院。その屋上で茂呂平は煙草を片手にそう呟く。

「…………」

癌だった。症状が出た頃には既に余命が宣告される肝臓癌。茂呂平もそれだった。肝炎と合併症を引き起こし肝臓の機能は低下、手術は困難で死を待つしかないような状態だと新聞で伝えられ、不謹慎だと思うが島民達は喜びの声を上げたりしていた。

「誰だぁ……あんた」

振り返りもせず茂呂平がそう言ったので、俺はこの時、内心ヒヤッとした。

「お、俺は……その……」

“通りすがりです”

なんて言ってさ、その場から逃げ出したい気持ちがそれはもうてんこ盛りだったもんだ。

「し、シーツを、と、取替えに」

まあ、そのせいでもっと筋が通らないこと言っちまったんだけどな。

「ちょっと待ててめえっ。ここ俺の病室じゃねえから!」

「え、ち、違うんですか?  すいません、てっきり金持ってるから、ここだと……」

「いや、金持ってるからって最上階って、屋上だと話変わってくるだろ! なんで大金積んだ先が雨風直射日光のサバイバルになんだ、ばか野郎!」

「で、ですよね~。あはは~……」

“やっちまった”

“殺される”

この時、まじでそう思った。
なんたって茂呂平は真面目で人当たりがよかった郵便配達少年の頃の面影は全くなかったからな。
一人になるため、屋上入り口にごつい黒スーツの部下二人を立たせてる所もそうだが、見た目からして極道のそれだった。

「ったく……変な奴来ちゃったぜ、まったくよぉっ」

細かった身体は恰幅がよくなり、肌着一枚の上半身は二の腕や首と言った部分に明らかに刺青と思われるものがチラチラしてて、背中前面にも何やら薄っすらと透けて見える紋がある。

「…………」

もうあの茂呂平ではない、そう思ったもんだった。けど……。

「カシューとナッツの野郎、後でぶん殴ってやる」

カシューとナッツ……。

「あの入り口の黒人二人ですか?」

あだ名だろうけど、カシューナッツという単語がここで飛び出すのは正直意外だった。

「そうだ。金貰ってるくせにちゃんと仕事してねぇみたいだからな」

「いや、彼らはちゃんと仕事してましたよ」

「ああ? してねえからお前みたいな奴がここに来ちまってんじゃねえか。何言ってやがるんだ」

「いや、だからあの、ちゃんと仕事はしてましたよ。俺に倒されちゃったけど……」

一応俺、鬼とか相手にしてたからな。
いくら鍛え上げられた黒人が人類最強に近いといっても、勝てた。刀あったし。

「おまっ、嘘つけっ。そんな、もやしみたいなお前が勝てるわけねえだろっ」

「いや、勝てましたよ。銃刀法違反ですけど」

言って、腰に掛けた愛刀の桃三泥見せたら、流石の茂呂平もビビッてた。


けど、同時に……。


「なんだ……殺りにきたってのか……」


凄い警戒させてしまった。まあ、当たり前だけど。


だからさ……。


「そうだ」


目を見て正直に言ってやったんだ――――。










「ちょ、ちょっとまって、ちょっとまって!」

「うん? は?  どうした?」

「いやっ、どうしたじゃないだろっ。爺って人殺しっ!?」

「いや、んなわけないだろ。どっちかっつぅと鬼殺しだ」








んで、まあ、茂呂平はというとだな。

「そうか……」

それだけ言って身体の向きを元に戻すと、また煙草をくぐらせはじめたんだ。

「ふぅ~……」

自分を殺しにきた奴が刀持って立ってるのに、背を向けて普通に煙草吸ってんだぜ? 

「ほっといても死ぬんだ。少しばかり付き合えや」

しかも、隣に来いと言いやがる。やっぱりすげえ奴なんだと思ったね。

「…………」

んで、俺もこの時、本気で茂呂平を殺そうとは思わなかったので、素直に隣座った。
まあ、実際、殺して来いと率先して抗議活動に参加しちゃってる神様には言われてたんだけどな……。

「お前の意思か? それか、雇われか?」

でも、言えるわけ無いじゃん。“いえ、実は神様に……”なんてさ。だから、苦笑いしてた。

「ふっ……まあ、誰でもいいか。今の鬼我島には俺を殺したいと思ってる奴ぁ、腐るほど居やがるだろうしな……」

この時、茂呂平の奴、悲しそうな表情してやがったんだよな。

「…………」

だから……。

「居るね。ものっそい居るよ。それは否定できない」

そう返してやった。
けど、俺自身、初めから茂呂平がこんなことをするのには何かしら理由があるんだと思ってたんだ。
それがここで確信に変わっただけだった。やっぱ、なんかあったんだって感じで。

「お前……俺が元気じゃなくてよかったな……」

本気で脅してるわけじゃないのはすぐにわかった。

「いいい、いや、だ、だって、ほ、本当のこ、ことでっ、でで」

だから、ビビッてなんかいなかった。いや、マジで。

「あぁー……冗談だ。本気にするな。自業自得で怒るほど馬鹿じゃねえ」

「で、ですよね。ですよねっ。人どころか神様だって怒らせることしたんだし当然ですよねっ」

茂呂平がそんな器の小さい奴じゃないことはわかってた。いや、ほんとだって。

「神様ぁっ……!?」

「いやぁああああ! 違う、神じゃない! 怒ってない! 怒ってなんかっ!」

神様という言葉を出した途端、茂呂平の表情が一変して本気で険しくなっていた。
そこで気づいたね。その“何かしらの理由”ってのが混ちゃん繋がりなんだろうとさ。

「お前、神様の何を知ってやがるっ。答えろっ!」

「いぃぃぃぃやいやっ! 知らないっ! 何も知らない!」

急に胸ぐらを掴まれたので、これには流石の俺も少しちょっとリトルビットビビった。

「嘘付けっ! 今さっき神も怒ってると言っただろ! どういうことだそれは!」

「いや、だってそれはっ……。嘘付けってぇっ……嘘付けって言ったからぁああああ! うわぁぁぁぁぁん!」

「うるせえ! 泣くんじゃねえ! 言ったのは今だろ! 正直に言わないとぶん殴るぞ!」

「わかっだぁっ! わかっだからはなじてぇっ!」

ここで俺は、全部話すと茂呂平が時間切れを迎えるだろうから掻い摘んでだが、素性や鬼尻の神様である人物と接点があること等を話した。

「ほぉ……」

聞き終わった茂呂平は真剣そのもの表情だった。そして。

「てめぇ、ふざけてんのか?」

最初に口にした言葉はそれだった。

「嘘下手糞すぎんだろ。誰が信じんだ。てめえがモモ太郎だなんてよぉ」

「まあ、言うよねぇ」

「言うよねぇって……。お前やっぱり嘘ついてるってのかっ?」

「いや、嘘ではないけどもさ……」

茂呂平の反応は至極当然。

「普通信じないよね。こんな、見た目若造があんたの歳引いてもさ、へでもねぇくらいの長生きしてるってことだし」

むしろ、生きているという事実こそが嘘だと言ってる様なもんだ。

「おいおい、お前……なんだよその反応はよ……」

けど、俺のあっさりとした反応に逆に真実味を感じたようで茂呂平は勝手に震えだした。

「まじで……まじでモモ太郎だってのか……?」

厳ついおっさんが明らかに動揺して怯えた目を向けてくるんだもんな。
この時は流石の俺も自分という存在に少しばかり嫌気が差したもんだ。

「残念ながら……そうなんだよ……茂呂平」

自分で正体ばらしたのにな。
本来なら、皆こんな目で見てくる立場なんだと気づかされちまって、返す言葉にはため息が混じっていた。

「ほんとにお前―――いや、貴方様がっ……」

「そうだって言ってるだろ。あと、貴方様ってのは止めてくれ。今まで通りで良い」

「いや、でもそれではっ―――」

「良いって言ってるだろ。つうか、そんなことはどうでもいいんだ。それよりも俺は“神様”に異常に反応したことについて聞きたい」

そう言ってやると、茂呂平はしばらく黙りこくった後……。

「かみさま……神様は、俺と……カシューナッツが……」

どう話せばいいのかまとまらず、迷いがあるの見え見えな様子でぽつりぽつり話し始めた。

「いや、ちげえっ。こんなのおかしいんだっ。くそっ」

と、思ったら、頭を乱暴に掻き毟りやがる。

「何も違うことは無いぞ、茂呂平よ」

言葉は若干調子に乗ってたかもしれない。
だが、この時点で既に俺は、茂呂平と福の神―――混ちゃんと取引したのは知っていた。

「福の神にカシューナッツを捧げて取引したんだろ? そのまま言えばいい」

ただ、混ちゃんが何を望んだのか、それがわからなかった。
だから、茂呂平の口から聞くしかなかったんだよな。
何百年も引きこもってる神の子と大悪党、どっちが口が割りやすいか考えた末の行動だ。

「な、なんでそれをっ……」

「なんでって、それは神と知り合いだからだよ」

「さっき言ってた神かっ、さっき言ってたのが福の神―――」

「いや、また別だ。でも、彼女―――福の神とは神同士の知りあいではある」

まあ、知り合いどころかって感じなんだが……。

「か、神様はどうしてるっ!? 福の神様は今でも俺をっ……!」

だが、すがり付いて問うてくる茂呂平は神同士の繋がりに興味が無く、福の神―――混ちゃんにしか興味が無いようだった。

「彼女は元気だよ。基本引きこもってるからわからないけど、多分な。ま、少なくともあんたよりは元気だ」

「そ、そうかっ……。……くうっ……」

そのままのことを伝えただけなんだが、茂呂平は安堵したように力なくベンチへ手を付いた。

「よかった……よかったっ……」

見るからにガラの悪くなった“一人”のおっさんが“一人”の少女の安否を知り、人目気にせず泣く。

「…………」

始まりから、過程、そして結果、すべておいて尋常ではないことが二人の間にはあったんだ。

「うっ……くうっ……」

その時の僕は、ただただ、茂呂平が落ち着くまでずっと待っているしかありませんでした。
























「って、終わりかいっ! なんか言えよ爺っ! 満足そうに空(くう)へ目を細めるなっ!!」

「はぁ~……」

「いや、満足なため息まで吐くなっ! これからだろっ! どうなったってんだよ! 二人はよ!」

「ふぅ~……」

だ、駄目だ……。
こいつ、フル無視であの時に身をゆだねて煙草を燻らしてやがる。

「それよりさ……百ちゃん」

「いや、それよりじゃねえよっ。続き話せよっ」

「いや、いいからいいから」

「いやっ、だから、いいからじゃなくてっ」

雲子はどうなったんだよっ!!

「百ちゃんはさ、俺達―――一族のこと……どう思う?」

無視かっ! やっぱ話お預けかっ!!

「ったく。なんだよ、急にっ」

「いや、それも、いいから。どう思う?」

マジでなんなんだ、爺の奴。

「どうって……」

「うん……」

急にマジっぽく聞いてきやがって。答えるまでずっと見つめてきそうな勢いじゃねえか。

「正直……よくわかんねえよ」

「わからない?」

「ああ……。別に特別って感じもしねえし、それに……」

一族なんて爺は言うが……。

「それに?」

「うん。それに……」


そもそも……。


「爺と俺だけじゃん。ももたろうっての。しかも血は繋がってねえしさ。それに、もっと言えば未だに歴史駆け抜けてるだろ、爺。一族って呼ぶには無理がありすぎる」

「そ……そうか。いや、そうだよな……。う~ん……いや、う~ん……」

「自分で聞いといて何悩んでんだよ。なんだ? 思ってたのと違う回答しやがったこいつ的なあれか?」

「いや、そうじゃねえ。そうじゃねえんだけど……。う~ん……」

そうなんじゃねえかよ……。違うならなぜそう悩む……。

「ああっ、わかったっ。質問変えるわ」

「あん? つうかさ、変える以前に、なぜ質問してくるのかを質問してえんだけど―――」

「却下だ」

「だろうね……。じゃあ、なんだよ。次の質問ってのは」

ったく……。
一応、こいつに育てられたから俺も同じように育ったんだろうけど……それでも、マイペースというか、“マイワールド”過ぎる……。

「うん……。それなんだが……ちょっと恥ずかしい」

「頬を染めるなキモい。何十年、いや何百年も恥を晒して生きてきたんだろ。今更恥ずかしがるなよ」

「は、恥を晒してきたってっ、それは流石に酷いぞっ! 前後ろに染み付いたブリーフだけで歩んできたみたいじゃん! そんなことばっかお爺ちゃんに言ってるとお前いつか酷いぞっ! 馬鹿っ!!」

「あーわかったわかった。で、なんなんだよ、質問ってのはよ」

俺も言いすぎた感はあるが、爺もいちいち気にしすぎだ。

「う、うん……。それは……」

「顔を背けるなっての! 告白みたいな雰囲気出すな! マジでキモイ!」

「う、うるっせ、このやろう! 爺もなぁっ、恥ずかしがるときあんだよ! むしろ歳いくにつれて人は臆病になんだよ! それで仕舞いにゃぁ何も感じなくなって、わが道を行き、周りに迷惑かけんだよ!!」

「お前っ、じゃあ、まだ爺じゃねえじゃねえか! むしろいつ爺になるんだ! あと千年先だってのかっ!? いったい何年生きるっ!」

いやー……違うな。俺もだ……。
俺もいちいち気にしすぎるから、こう話が進まないんだ……。

でも、こいつに育てられたんだもん。しょうがないもん。 

「何年だって生きるわ! そしてお前を守る! そして揉むっ!」

「揉むな! っていうか何を揉むんだよ! 俺か!? 神かっ!?」

「神だ」

「神か……」

なんだこれ……。どこを目指したらこんな着地の仕方になるんだ……。

「と、兎に角だっ。お前への質問、い、いくぞっ!」

「お、おうっ。こいっ」

何が来るのかはわからないが、どれも返してやるつもりで身構える。

「そ、その……なんだ……」

「う、うん……」

へタレか俺たちは……。

「百ちゃん……はさ……」

「うん……」

「俺に……いや、俺と……」

「お、おう……」

この感じ凄くホモっぽい雰囲気を感じるのは俺だけなのか……。

「過ごしてきて……どう……?」

「どう……? 何が?」

「いや、だから、今まで俺と過ごしてきてど、どう? 嫌……かな?」

「ちょ、ちょっとまて! 敢えて気にしないようにしてたけどやっぱ無理! その、幼馴染が愛に目覚めた瞬間みたいな聞き方やめろ!」

恋ちゃんでもそうならねえわ。っていうかあいつは絶対そうならねえわっ。
ああーきもいっ。いやーきもいっ。なんかいや、ほんといやっ。同じ顔してんのが更に嫌、嫌、嫌っ!!

「いや、ごめん。そのなんか……恥ずかしくて……」

「そうだろうなっ。いや、多分、立場逆なら俺も恥ずかしいよ。でも、男になれっ。乙女になるなっ」

「そ、そうだよな……。で、どう?」

「どうっ!? いや、それは、あんた……それは……」

って、俺も大概の反応かっ……。
つうか、むしろ、俺のほうこそテンパってる主人公の様な、照れ隠しの様なっ……だから、爺にやいやい言ってるのかっ!?

「どうなんだ。俺と過ごしててめえは嫌なのか? 良かったのか? どっちかはっきり言いやがれ。クソガキが、死ねっ」

「いや、男過ぎるだろ……。家族って言うかファミリーとかブラザーみたいじゃないか……」

盃を交わした的な方の……。

「確かにそうだな。っていうか、何回聞かすんだよ。じいじ、早く答えてちゃんなのです!」

「ちっ……殴りたいわぁ……。まあ、いい。わかったよ。答えてやる」

「おう。じゃあ答えろ」

「うん。爺と暮らしてきて……だろ?」

正直、しんどいときも疲れたときもぶん殴りたいと思ったこともあった。
全て頭に“物凄い”が付くくらいに。


ただ、まあ、同時に……。


「楽しく……はあるんじゃねえの? しらねえけど……」

こう言ってやるのが精一杯だが、まあ、嫌だとか、離れたいとかは思ったことが無い。
なんやかんやで俺の為に色々やってくれるしな。……まあ、やりすぎというか、なにやってくれてんだってことはあるけど……。

「うん……。楽しい……か」

「あ、ああ。まあ、そうなんじゃないの。しらねえけど」

“しらねえ”とか素直じゃない中二のような感じをどうにも出してしまうのが、自分はまだまだ子供なんだと思い知らされる。だが、だからこそ、爺が必要なんだろうということもわかる。……しらねえけど。

「嬉しいよね」

「え? そ、それだけっ?」

「ああ。それだけだ。まあ、しらねえけど……」

「お前もかよっ」

結局あれか、似たもの同士だから離れる事がないだけなのか……。

「あと、もう一つだけさ、百ちゃん。いいかな?」

「ああ? まだあんのかよ」

つうか、最初から話の流れで聞けばいいのになんでこう、インタビュー的に聞くかな……。
そら、構えるってもんだ……。

「これで最後だ。いいかな? つうかよくなくても聞くぞ。言葉は案外、どうしても届く。防げまいよ」

「二言三言多いんだよ。普通に聞け」

「おう、そうか? なら聞くぞ」

「ああ。なんだ」














“百ちゃんってさ”













“巨乳好き?”





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