• TOP
  • しおりを挟む
  • 作品推薦
  • お気に入り登録
学園奉仕活動ー序ー VS Two

始まりはいつもオシャンティーに

「よぉ~し。カルメロだ。授業始めるぞぉ~」

ドアを開けて入ってくこの感じも、三日目となりゃ慣れたもんだな。

「はいっ」

生徒諸君もシャンと背筋伸ばしてその気になってるし。もしかすっと、俺、案外教師に向いてるんじゃないかな。

「じろさんは昨夜未明から行方不明だ。じゃあ、カーテンクローズ!  カモーン!」

窓際族へロックな指差しを送る。

「はいっ。準備できていますっ!」

おっ、やるねぇ。
やっぱり、俺教師に向いてるんだよ。少なくとも、このクラスは俺を必要としてるっぽいぞ。

「では、暗転―――」

「電気のスイッチ押しましたっ!」

おおっ。なんて空気の読めるやつ等っ。

「よっしゃ。では、いつもどおり、Vいくぜ、V。ぽちっとなってやつ」

プロジェクターのボタンを押し、一番前の席に居るだろう“アイツ”を見る。

「…………」

見てろよ、百ちゃん。これから流すのはお前にまだ話していない部分だ。
終わった後、お前がどう感じるかは敢えて考えず、真実だけを流すことに決めたんだぜ、俺は。

「ぐぅ……」

ん?  えっ、ちょっとまって、あいつ……?

「え、まじでっ……?」

お、おいおいおいおいっ。ちょっと待てよ。まじかよっ。寝てるのっ……!?

「うぅ……ん……。あはっ……」

か、完全に寝てるやんっ……!  楽しそうな夢見てはるでっ……!?

「う、嘘ぉっ……。ちょっ、こんなとき、爺どうしたらっ……」

と、あたふたやってる内に……。






“数々の鬼我島伝説を紐解いてきたミスター鬼我島伝説M”




ビデオが始まっちまった……。



「ちょっとまてっ、ちょっと待てってんでぇ!  俺っちちぃとばかりうんこ行ってただけだからなぁ! 行方不明じゃねえからっ!」


じろさんも遅れて教室にやってきやがった……。





“今宵語るのは……”



そして、真剣に画面へと目を向ける生徒達を止める事は出来そうも無く……。
生徒達にシーと注意されたじろさんは静かになり、完全に授業という名のビデオ鑑賞会が始まっちまった……。
















遥か昔、鬼我島は鬼と人間と二足で歩行し人語を話す動物達が共に共存していたと言われています。

そして、そのきっかけとなる出来事というのが、鬼我島の住人なら誰もが一度は聞いたことがある歴史的大戦争。

そう……“鬼人動戦争”がきっかけだと言われています。

突如現れた鬼が人間を襲うようになり、人間と近い所で暮らしていた動物達も同じく住処を荒らされ、奪われ、それに酷く怒りを覚えた結果、戦うため自ら進化して抵抗を始めたことにより、人間と動物の連合軍対鬼という、鬼我島全土を使っての大規模で数え切れない犠牲を出した戦争は勃発しました。


開戦後、数では勝っていた連合軍ですが、一人個人でもかなりの戦力になる鬼に戦力は日に日に削られていき、次第に劣勢へと追いやられていきます。

敗北。その二文字が連合軍全体を包み始めた時、動物数名を引き連れた一人の男が戦場に現れ、戦況を大きく変えます。




そう、その現れた男というのが“モモ太郎”。



瞬く間に、鬼を蹴散らし、大将である大鬼目掛け突入していき……。





“連合軍大勝利”。



この一報が鬼我島全土を駆け巡り、我々人間が今生きているということが証明とでも言うように、人間と動物達の連合軍の勝利で幕を閉じたのです。






と、まあ、簡潔ではありますが、皆さんが知っている歴史はここまでだろうと思います。





ですが、皆さんはこれを小学校等で習い、何の疑問を感じることなく今まできたのでしょうか?




鬼の行方や人間の様に進化した動物達の行方など、疑問に思ったことはないでしょうか?




今回はその、どこにも記されていないタブーとも言うべき、鬼と動物達の行方を“ミスター鬼我島伝説”M”が紐解きます。





  • TOP
  • しおりを挟む
  • 作品推薦
  • お気に入り登録